離婚① 離婚について
このページでは離婚について説明します。
1.離婚の手続きについて
主な離婚の手続きには①協議離婚、②離婚調停、③裁判による離婚があります(その他に審判による離婚があります。)。
①協議離婚とは、夫婦間での話合いにより離婚の合意をして、役所への届出をすることにより成立する離婚をいいます。一般的には協議離婚により離婚するケースが多いといえます。協議離婚の際に、財産分与や子供の養育費などの財産に関する取決めをした場合、支払いを受ける側としては、それを確実なものとするため公正証書を作成することが有用です。
協議離婚においては、夫婦間で合意をしただけでは法律上離婚をしたことにはならず、戸籍法に基づく役所への届出により、はじめて離婚の効力が生じます。離婚をする場合において、未成年の子がいる場合は、どちらか一方の配偶者を親権者と定めなければなりません(民法819条1項)。このため協議離婚により離婚届をする場合の離婚届出書には親権者の記載が必要です。
②離婚調停とは、家庭裁判所において、調停委員会を介して離婚を含む夫婦間の関係調整を行う手続きを指します(離婚調停は夫婦関係調整という調停を申立てる形で行われます。)。離婚調停では、財産分与、養育費、親権者の指定、慰謝料などの離婚に関連する事項についても、一つの申立書で調停を申立てることができ、離婚と併せて審理されることになります。なお、離婚が成立するまでの当面の婚姻費用は別の申立書により調停を申立てることになります。
離婚調停などを申立てる場合は、既定の事情説明書に加えて、離婚を求めるに至ったそれまでの事情や生活状況についてより詳しく説明した事情説明書を別紙で添付することも有用でしょう。
離婚調停の場において離婚する旨の調停が成立した場合、協議離婚とは異なり、法律上その時点で離婚の効力が生じます。ただし、役所に対する届出が必要なのは同様です(届出には調停調書の謄本が必要です。)。これは原則として調停を申立てた側の当事者が行わなければなりません。また、財産上の給付に関しては強制執行が可能となります(ただし、調停条項の定め方に問題がある場合は強制執行ができない場合もあるでしょう。)。
他方で、離婚に関して当事者間で協議が纏まらず終了した場合(これを調停不成立といいます。)は、改めて③裁判離婚による方法で離婚を求めることになります(なお、調停不成立となっても当然には裁判には移行しません。)。
なお、調停を取下げる場合は、相手方の同意は必要ありません(家事事件手続法273条1項)。
③裁判離婚
裁判により離婚を求める場合、いきなり裁判を起こすことはできず、まずは調停による話合いをする必要があります(家事事件手続法257条2項。これを調停前置主義といいます。)。調停が前置されずに離婚訴訟が起こされた場合は、裁判所は一定の例外を除き、職権で調停に付さなければなりません。調停が不成立や取下げとなった場合でも一応調停自体は前置されているため、調停前置の要件は満たしているとの運用がなされています(ただし、実質的に何の話合いもなされていない場合や調停が数年前である場合などは、調停前置の要件を満たしているといえるか検討が必要となります。)。
裁判離婚においては、調停と同様に財産分与なども併せて提訴することができます(人事訴訟法32条)。
裁判離婚においては、裁判所は財産分与といった附帯処分や親権者の選定といった事項について、自ら事実の調査を行うことが可能となっており(人事訴訟法33条)、これにより家裁調査官の調査がなされることもあります。また、裁判所による審問と呼ばれる調査が行われることもあります。
2.離婚事由について
民法が規定する裁判上の離婚事由は以下のとおりです(民法770条1項各号)。なお、裁判所は以下の①から④の事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻関係を継続させることが相当であると判断する場合は、離婚しないという判断をすることも可能です(民法770条2項)
①配偶者に不貞な行為があったとき。
②配偶者から悪意で遺棄されたとき。
③配偶者の生死が3年以上明らかでないとき。
④配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
⑤その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
①については、一方の配偶者が婚姻外の異性と性的関係を持つことを指します。同性と性的関係を持つ場合は⑤の問題となります。
②は、一方の配偶者が、単身赴任などの正当な理由なく他方の配偶者と同居せず放置する場合などを指します。
⑤については、長期間の別居や暴行・暴言などの様々な事情から判断されるので、この類型による離婚事由が主張されることが最も多い印象です。
裁判による離婚の場合は、上記離婚事由のいずれかが認められない限り、原則として裁判所は離婚を認めてくれませんが、協議離婚や離婚調停の場合は当事者が合意する限り、離婚することは可能です。
なお、自ら離婚原因を作出した、いわゆる有責配偶者が、裁判により離婚を求めた場合は、例外を除き裁判所は離婚を認めてくれません。
3.離婚調停について
離婚について当事者間での協議が纏まらない場合は、先述のとおり、まずは離婚調停を申立てます。
離婚調停の管轄は、相手方配偶者の住所地の家庭裁判所または当事者が合意した家庭裁判所になります(家事事件手続補245条1項)。配偶者が遠方に居住している場合は、電話会議やテレビ会議による方法により、遠隔地から調停を行うことも可能です。ただし、電話会議では離婚を成立させることや証拠を調べることはできないことに注意が必要です。
なお、離婚訴訟の場合の管轄はいずれの当事者(原告または被告)の普通裁判籍を管轄する家庭裁判所に専属します(人事訴訟法4条1項)。
離婚調停では、当事者が顔を合わせなくて済むように待合室が分かれており、また、双方の当事者が入れ替わりに調停室に入り、調停委員に対してそれぞれの言い分を伝える形で進められます。
離婚調停は平日に行われますので、仕事をしている方は参加が難しいケースが多いですが、その代わりに弁護士が代理人として出頭することも可能です。ただし、離婚を成立させる場合は、弁護士のみが出頭しても成立させることができません。これは離婚する当事者の意思確認が重要だからです。また、同じ理由により、調停条項案を書面による受諾をする形で調停を成立させることはできません。