交通事故④ 損害賠償項目について(物損)
このページでは交通事故の損害項目(物損)について説明します。
1.物損事故の損害項目
交通事故により、物損事故が発生した場合の主な損害項目としては、①修理費または買替差額、②登録手続関係費、③評価損、④代車使用料、⑤休車損が挙げられます。その他の細かな損害費目としては、車両購入の消費税、レッカー代、事故車の保管料等が挙げられます。なお、物損事故の場合は、一部の例外を除き慰謝料は認められません。
2.修理費または買替差額
交通事故により、自動車が破損した場合、原則として、事故により破損した部分を修理するための修理費が認められます。この修理費については、破損部分を修理するための相当な範囲で認められるのであり、過剰な修理費用は認められないことに注意が必要です。
修理費が、車両の時価額に登録手続関係費等の買替諸費用を加えた金額を上回ってしまう場合は、いわゆる物理的・経済的全損として買替差額(時価額-事故車のスクラップ代金)の範囲で損害賠償が認められます。
自動車の時価額は、原則として事故車と同一の車種、年式、型、同程度の使用状態、走行距離等の自動車を中古市場で取得するに要する価格として評価され、基本的に有限会社オートガイドが発行するレッドブックを参考にしますが、こちら側でレッドブック以上の時価額であるという証明ができれば、レッドブック以上の価格が時価額と認められる場合があります。
なお、経済的全損の場合であっても、実際に自動車を買替えるとなると多額の費用がかかるので、事故車のオーナーも廃車にしない場合が多く、実際の示談交渉においてはスクラップ代金について時価額から控除をしない処理も多いかと思われます。
3.登録手続関係費
物理的・経済的全損により自動車の買換が必要となった場合、上記買替差額の他に、自動車税、登録費用、車庫証明費用、納車費用、廃車費用のうち法定の手数料相当分、ディーラー報酬の一部などの損害が相当な範囲で認められます。
4.評価損
事故により自動車の安全性にかかわる躯体部分等の修理が必要となった場合、修理したとしても機能や安全性に疑義が残るため、中古市場で自動車を売却する際には、いわゆる事故車として市場価値が下がります。この市場価値の下落部分を評価損といいます。評価損は一般的に、輸入車や高級車で認められる場合が多いですが、これらでなくても納車後まもなく事故に遭った場合などは認められるケースがあります。登録年数や走行距離によりますが、一般的には、修理費の2割程度とされることが多いです。
なお、上記のとおり評価損は、修理した場合の市場価値の下落部分についての損害なので、物理的・経済的全損の場合は認められないことに注意が必要です。
5.代車使用料
事故車の修理期間中や買替期間中には自動車を利用することができませんから、相当な範囲で代車を利用することに伴う代車使用料が認められます。代車使用料は1週間~2週間とされることが多いと言われていますが、個々の事案に応じて代車使用料の認められる期間が異なる傾向が強く、一概には言えないと思われます。
6.休車損
事故車が事業者の営業に用いられていた車両の場合は、修理期間中や買替期間中には営業に用いることができませんので、その損害については休車損として相当な範囲で認められます。休車損は、事故車によって一日に得られる利益から支出を免れた変動経費を控除して、その残額につき修理期間(修理の場合)又は買替期間(買替の場合)を乗じて算出されます。