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交通事故② 損害賠償項目について(傷害)

このページでは交通事故の損害項目(傷害の場合)について説明します。

1.傷害の場合の損害項目

交通事故により、傷害を負った場合の主な損害項目としては、①治療費、②入通院慰謝料、③通院交通費、④休業損害、⑤後遺障害慰謝料、⑥逸失利益が挙げられます。この他にも事案に応じて入院雑費、付添看護費(入通院に付添が必要な場合)、装具・器具等購入費などが損害項目に加わる場合もあります。
損害賠償額については、日弁連交通事故相談センターが発行するいわゆる「赤い本」又は日弁連交通事故相談センターが発行するいわゆる「青い本」により損害賠償額が定められており、裁判所ではこの基準のいずれかを利用することが通常です。なお、関東圏では主に「赤い本」が用いられる傾向があります。


2.治療費

治療費については、治療の必要性・相当性が認められる場合に、支出した治療費が損害として認められます。被害者の症状や治療経過に照らして、通院期間が極端に長い場合や通院頻度が極端に高い場合は治療の必要性・相当性を欠くとして、損害として認められない場合があります。整骨院や針灸については、症状に照らして施術が有効であり、特に医師の指示がある場合に認められます。
なお、交通事故の場合であっても健康保険を利用して治療をすることが可能であり、過失割合が大きい場合や治療費が高額になる場合などは、健康保険で通院した方が有利な場合があります。
症状固定後の治療費については、原則として損害賠償の範囲には含まれませんが、ごく例外的に認められるケースもあります。


3.入通院慰謝料

事故により受傷することによる精神的損害については、入通院慰謝料として損害賠償が認められています。損害賠償の基準を定めるいわゆる赤い本においては、原則として別表Ⅰを用いることにより、入通院期間に応じて慰謝料額が決められています。なお、例外的に症状や治療経過に照らして入通院期間が長期であると判断される場合は、実通院日数の3.5倍程度を目安とすることがあります。
他覚所見のないむち打ち症の場合は、別表Ⅰの3分の2程度の慰謝料額である別表Ⅱが用いられ、こちらも通院期間が長期にわたる場合は、実通院日数の3倍程度の慰謝料とされることがあります。
加害者によるひき逃げや、麻酔なしの手術を余儀なくされた場合などは、通常の慰謝料から増額される場合もあります。


4.通院交通費

通院交通費については、原則として鉄道やバスといった公共交通機関を利用した分につき認められます。自家用車で通院した場合は、実費相当額としてガソリン代(1キロメートルあたり15円)を請求することが一般的です。
タクシーで通院した場合の交通費は、原則として損害と認められませんが、事故により歩行が困難である等タクシーで通院することについて必要性・相当性が認められる場合は、例外的にタクシー代が認められます。


5.休業損害

交通事故により仕事を休まざるを得なくなり、収入が減少した場合は、休業損害を請求することが可能です。給与所得者であれば、会社に休業損害証明書を書いてもらい、原則としてその金額が休業損害となります。なお、有給休暇を使ったことにより、現実に収入減がない場合でも、例外的に休業損害が認められます。
自営業者の場合は、前年度の所得を基準に休業損害を算定しますが、休業の有無にかかわらず支出することが余儀なくされる費用(固定費といいます。)を加算することは一般的に認められています。
主婦の場合は、賃金センサスを基準に休業損害を算定しますが、治療日数全てについて休業損害が認められるケースは稀です。


6.後遺障害慰謝料

赤い本では、交通事故により後遺障害が残った場合、自賠責保険で認定された後遺障害の等級に応じて2800万円(第1級)から110万円(第14級)の後遺障害慰謝料が認められています。


7.逸失利益

後遺症により労働能力の低下や将来の仕事への影響がある場合、逸失利益として減少した収入分を請求することが可能です。計算式は以下のとおりです。
◎基礎収入×(1-労働能力喪失率)×労働能力喪失期間に相当するライプニッツ係数=逸失利益
基礎収入は原則として事故前年度の年収です。例外的に賃金センサスを参考にすることもあります。
労働能力喪失率は後遺症の等級により定まっています。ただ、むち打ち症や変形・外貌醜状などの場合は、等級通りの労働能力喪失率が認められない場合が多いです。
労働能力喪失期間は、原則として症状固定時から67歳までの期間で計算されます。例外的に未就学児は18歳又は大学卒業時から67歳までの期間となります。症状固定時に既に67歳を超えていた場合は、平均余命の2分の1とするのが一般的です。
いわゆるむち打ち症などは、等級に応じて労働能力喪失期間が5年~10年程度に制限されるのが一般的です。
中間利息控除はいわゆるライプニッツ係数を用いるのが一般的です。