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消費者契約法① 消費者契約について

このページでは消費者契約法について解説します。

 

1.消費者契約法について

消費者契約法は、消費者と事業者との間で契約を締結する際に、消費者と事業者との間に情報・交渉力の格差があることから、契約締結過程や契約条項について修正を加えることで消費者の利益を図ると同時に、適格消費者団体による差止請求を通して、消費者被害の発生や拡大を防止することを目的としています。

本稿では、消費者契約法のうち、適格消費者団体制度を除く、契約の効力について規定した部分を解説します。

 

2.事業者と消費者

消費者契約法は、消費者と事業者との間の契約に適用されます。消費者とは、事業として又は事業のために契約の当事者となる場合におけるものを除く個人を指します(2条1項)。また、事業者とは、法人その他の団体及び事業として又は事業のために契約の当事者となる場合における個人を指します(2条2項)。なお、個人が労働契約を締結する場合は、事業のために契約の当事者となる場合にはあたらないと考えられています。

 

3.消費者による意思表示の取消し

消費者契約法は以下の場合に、消費者から契約の申込み又は承諾の意思表示について、取消しを認めています。

① 不実告知及び断定的判断の提供(4条1項1号及び2号)

→事業者が告げた内容が事業者の債務の内容となっている場合は、債務不履行との区別に注意が必要です。

→不実告知については、それが重要事項(4条5項)に該当することが必要です。重要事項平成28年の改正により、重要事項の範囲が拡大されました。

→勧誘とは店舗などで勧誘を行う場合のほかに、新聞の折り込みチラシであっても勧誘に該当しうる場合があります(最判平29年1月24日)。

② 不利益事実の不告知(4条2項)

→不利益事実の不告知については、重要事項(4条5項。ただし、不実告知とは異なり、同項3号については適用がありません。)又は重要事項に関連する事項についてなされることが必要です。

→不利益事実とは、事業者の告知により不利益事実が存在しないと消費者が通常考えるべきものに限定されていることに注意が必要です。例えば、消費者が商品を購入する際に、事業者が翌週から値引きがされることを故意に告げなかったとしても、不利益事実の不告知には該当しないと考えられます。

③ 契約締結の際の不退去または退去妨害(4条3項1号及び2号)

→事業者による不退去または退去妨害によって消費者が困惑して契約を締結したという因果関係が必要であり、例えば事業者が退去の求めに応じて一旦退去したが、後日の訪問により自由な意思で契約を締結した場合には本項による取消しはできないことになります。

④ 過量販売(4条4項)

→平成28年の改正により新設されました。

→本項の適用のためには、事業者が契約の締結を勧誘するに際して、当該契約が過量な内容であることを認識していることが必要です。

→過量な内容かどうかの判断において、消費者が既に同種の契約を締結していた場合は、過去に購入した分量等と新たに購入した分量等を合算した分量等で判断されます。

 

これらの取消権の行使は、追認することができる時から1年以内、契約締結から5年以内に行わなければなりません(7条1項)。追認をすることができる時とは、取消しの原因となっていた状況が消滅した時です。

 

4.契約条項の制限

消費者契約法は以下の条項を無効としています。

① 事業者の損害賠償の責任を免除する条項(8条)

たとえば、事業者の債務不履行により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除する条項のように、事業者が債務不履行により何らの賠償責任を負わないとするものは無効となります。また、債務不履行が事業者(代表者や従業員も含む)の故意または重過失によるものであれば、一部であっても事業者の賠償責任を免除する条項は無効となります。

② 消費者の解除権を放棄させる条項(8条の2)

事業者の債務不履行により生じた消費者の解除権を放棄させる条項や、瑕疵担保責任に基づく解除権を放棄させる条項は無効となります。

③ 消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項等の無効(9条)

消費者と事業者との間の契約により、契約の解除に伴う損害賠償額の予定または違約金を定めた場合であっても、解除に伴い事業者に生ずべき平均的な損害を超える部分については無効となります。

また、消費者が支払いなどを遅延した場合の損害賠償額の予定等を定めた時は年14.6%を超える遅延損害金を消費者に請求することはできません。

④ 消費者の利益を一方的に害する条項の無効(10条)

 

5.法改正について

消費者契約法は、平成30年に法改正がされました。主な改正内容は以下のとおりです。

① 取消の対象となる勧誘行為の追加

→不安をあおる告知をして勧誘をする場合や、恋愛感情に乗じて勧誘する場合が追加されました。また、いわゆる霊感商法や認知症等の判断能力が低下した状態を利用した勧誘なども追加されました。

② 不利益事項の不告知の要件緩和

→不利益事実の不告知について、従来は事業者が故意に告げなかった場合に限られていましたが、これに重過失も追加されました。

③ 事業者の損害賠償責任を事業者自ら決める条項の無効

→事業者の損害賠償責任の有無及び責任の限度について、事業者自身に決定権限を付与する条項は無効となります。

④ 消費者の解除権の有無を事業者が決める条項の無効

→事業者に消費者の解除権の有無を決定する権限を付与する条項は無効となります。

⑤ 消費者の後見等を理由とする解除条項の無効

→消費者が被後見人になった場合に事業者が契約を解除できるという条項は無効になります。

⑥ 事業者の努力義務の明示