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交通事故① 交通事故における損害賠償請求

このページでは交通事故における損害賠償請求の流れについて説明します。


1.損害賠償請求の流れ

①事故発生→②治療の開始→③症状固定→④(後遺障害申請)→⑤示談交渉または裁判→⑥和解契約の締結
交通事故による損害賠償請求は大まかに上記の流れにより進められます。なお、後遺障害の申請はすべてのケースで行うわけではなく、症状固定時に後遺障害が残ってしまった場合にのみ、後遺障害の申請をします。また、一部の例外を除き、保険会社との示談交渉により金額がまとまらない場合には、裁判による解決を図ることが通常です。


2.治療

交通事故により怪我をした場合の治療費は、加害者に請求することになります。加害者が任意保険に加入している場合は、任意保険会社が被害者の通院している病院と直接連絡を取り、治療費を支払うという運用(いわゆる一括対応)がなされる場合が殆どです。この場合は、任意保険会社に対して、同意書を提出する必要があります。
加害者が任意保険に加入していない場合は、被害者自身の加入する健康保険で通院した上で自賠責保険(または自賠責共済)に請求することになりますが、傷害の場合は上限額が120万円となりますので、無制限に請求できるわけではありません。
交通事故の治療費については、自由診療となるのが一般的ですが、被害者側の過失が大きく、治療費の自己負担部分が高額になることが見込まれる場合等は、自由診療ではなく健康保険を利用して通院することも検討すべきです。
原則として入通院期間の長さにより慰謝料の金額が決まる反面、通院頻度が少ないと治療が必要ないと判断されてしまい治療費の支払を打切られる可能性もありますので、一定の通院頻度や通院期間をもって通院する必要があります。


3.症状固定

治療を継続していくにつれ、治療をしたとしても症状が改善しない状態になりますが、その状態を症状固定といいます。
基本的には治療にあたった医師の判断により、症状固定時期が決まりますが、場合によっては医師の判断の前に、保険会社の判断により治療費の支払いが打切られる場合があります。その場合は、弁護士が介入して症状固定時期を提示することで、1カ月程度治療期間を延長してもらえることもありますが、既に怪我の程度に応じて一般的に必要とされる治療期間を超えている場合は、交渉をしても治療期間の延長は難しい場合が多いのが通常です。


4.後遺障害申請

症状固定後、後遺障害が残ってしまった場合は、自賠責保険に対して後遺障害の申請をして、損害保険料率算出機構が後遺障害の等級認定をします。後遺障害はその程度に応じて14の等級に分かれており、等級認定は原則として労働者災害補償保険における障害者等級認定基準に準じて行われます。
後遺障害の申請方法には、①被害者請求、②任意保険会社による請求(事前認定)、③加害者請求の3種類があります。③は実務上ほぼ行われることはなく、①または②の方法により後遺障害の申請をすることが一般的です。②の任意保険会社による請求は、損害賠償金を支払う側による請求ですので、①の被害者請求による方が一般的には等級認定される可能性が高いと言われていますが、さほど大きな差はないと考えられます。
被害者請求だと等級が認定された場合、自賠責の部分の損害賠償金につき早く受け取ることができる反面、デメリットもあり、後遺障害の申請に必要な資料を被害者自ら収集しなければならず、手間と費用がかかります。
損害保険料率算出機構の判断により、十分な等級認定が得られなかった場合は、異議申立てという方法により、再度の審査を求めることができます。なお、異議申立てにより、当初認定された後遺障害の等級が下がることはありません。


5.示談交渉または裁判

後遺障害の結果が判明した後は、損害賠償額を計算して保険会社との間で示談交渉を行います。損害賠償額については、①自賠責基準、②保険会社の自社基準、③裁判基準といった3つの基準があり、金額でみると自賠責基準<保険会社の基準<裁判基準と裁判基準が最も高額となっています。
保険会社は②の自社基準に従って損害賠償額を提示しますが、弁護士が交通事故の被害者側を代理する場合は、③裁判基準により請求しますので、一般的には弁護士に示談交渉を依頼する場合は損害賠償額が大幅に増加する場合がほとんどです。ただし、過失割合や休業損害の認定においては、自賠責独特の基準がありますので、被害者の過失割合が大きい場合や自営業者の場合には注意が必要です。
保険会社との示談交渉により損害賠償額がまとまらない場合は、事案の内容に応じて交通事故紛争処理センターおける解決や裁判所の判断を仰ぐことになります。なお、交通事故紛争処理センターおける判断は、事実上保険会社に対してのみ拘束力があります。


6.和解契約の締結

保険会社との示談交渉により損害賠償額が纏まれば、そこで加害者との間で和解契約を締結して、最終的に保険会社から損害賠償金が支払われます。また、裁判になった場合であっても、保険会社と和解することは妨げられず、和解により解決して損害賠償金が支払われるケースがほとんどです。裁判を起こしている場合は、各種の損害に加えて遅延損害金と弁護士費用も併せて請求するのですが、和解により解決する場合は、これらの支払につき、被害者側が免除するか調整金名目で一定額が支払われるのが通常です。